TEL QUEL JAPON

リビドーの音階が砂漠に死んだヤギの乳をしぼっていく

MARIKO 柳田邦男 新潮社

MARIKO 柳田邦男 新潮社 昭和55年7月5日 発行
25刷 昭和56年9月25日

その頃私は3Fの英会話学校で仕事をしていた。親しい友達が遠くに去っていくことが決まっていて、その人は私の授業が終わるのを2Fの書店で待つことが多くなった。その人が平積みにされた新刊本の前で立ち止まった。「何を見ているの? あの本ね、大ベストセラみたいね。興味あるの?あの本に」「タイトルみて。」「あの本、読みたいの?買いたいの?」「タイトルみて(微笑)!」「タイトルだけで買いたいの(微笑)?」そんな会話をした。私の興味は他にあったが、そんな記憶のせいでよく覚えている。この本は飛ぶように売れていた。今その本を手にしている。
期待しないで読み始めたが、非常に貴重な本だと気づく。ところどころメモしながら読んでみようと思う。

P.51 野村は松岡の訓電のうちアメリカ側の感情を刺激する恐れのあるものについては、伝達を控えたり、一部を削除して伝えたりし、さらにアメリカ側からのステートメントについても、しばしば手許に控えおいたために、松岡を激怒させた。
:このあたりは私がマジックからとった情報と完全に一致する。野村は職務違反である。野村はルーズベルトと個人的に親しく、あちら側についていたのだろう。野村の辞表願い(職場放棄)も書かれている。この本では、戦争回避派、尾崎秀美が戦後そう呼ばれている、いわゆる非戦派と同じ範疇なのがわかる。どちらが良い悪いはこの際控えるが、開戦時に反戦主義者が公然と居て、しかも戦後彼らは讃えられ賞賛される側に回ったことも確かである。この本のMARIKOは寺崎の娘で、宣戦布告が遅れた原因と一説に言われている大使館の「送別会」は、寺崎の送別会であることがわかる。だいたい交換船で帰国した人間はほとんどが共産主義者か親米派であるが、これを読むと大使館の人間はほとんど全部、反戦主義者ということになっている。遅れて持って行って、ハルやルーズベルトが激怒するのも、全部出来レースかもしれない。どうでもいいことかもしれないが、MARIKOの名付け親は重光葵である。近年山本五十六についても新解釈が出てきているが、この本でも山本五十六は、むしろ米国寄りの人物である。私の祖父も2・26の少しあとに亡くなったが、日米開戦は極端に嫌ったはずで生きていれば親米の非戦派だっただろうから、だからどうだと言うつもりはない。この本はMARIKOのBiographyのような本なので、読んでいてこの一家に情が移っていくのも当然で、そのへんのことをなるべく割り引いて客観的に記述しようとは思っている。書き出しは、オヤッと思ったところに限定する。判断は控える。

P.71 「大統領が天皇陛下に送った親電のことだけれど、あの親電のために僕が何をしたか、日本の外務省や軍部にはもうわかっているかもしれない。もしわかっていたら、僕たち家族の命はないものと思わなければならない」
:寺崎が妻グエンに言うセリフである。親電とはこのような性格のものだったのだろうか。つまり「ルーズベルトは平和主義者だという、工作」か。親電の関係者はたくさんいる。Tel Quel Japonでも既に何人か関係者の名前を上げている。これは在米の日本人から提案したことで、米人の策略ではない。そんなことで戦争が回避できると思っていたのか、米国に魂を売った日本人が「ルーズベルトにへつらうために考え出したことか」なんとも言えない。東京裁判でも問題視されたが、東條が取り合わなかったので、助かった。実際ほとんど何の意味もないないようであった。Tel Quel Japonでは既に内容も紹介済。朝河だけでなく、寺崎も、親電には深く関わったということは、事実と見ていいだろう。

・・・・・追記:2013年11月10日・・・・・
この本の内容にもぴったり一致する。この論考も素晴らしいと思う。
ルーズベルトから天皇への親書、生成過程 杉原誠四郎
何故これ(Tel Quel Japn過去記事より)を探し出したかといえば、あの電報を差し止めたのは瀬島龍三だとか、あの電報がもっと早く天皇陛下に届いていれば、真珠湾はなかった、とかいう「お話じいさん二世」のような人たちの文章をネット上で見たからである。元は産経の記事らしいが、そこから派生した無茶苦茶なBlog記事が多い。瀬島憎しとしておけば、ワンパターン保守が飛びつくのはよくわかるが、電報そのものの生成課程に触れもみで「電報を差し止めたのは瀬島らしい」という情報だけで歴史原稿を一本仕上げるのは、紙芝居じいさん、と言わざるを得ない。何故ならこれでは「ルーズベルトがチャーチルと苦労して仕組んだ日本の真珠湾攻撃」に関して端から無知、そしてその無知の露呈と言わざるを得ないからだ。すでに資料は山のようにある。あのBarbara Waltersでさえ米国内番組で認めていたではないか。日本人でありながら米製Propaganda「Remember Pearl Harbor」に与しようという保守の人間はそろそろ首でもくくって退場したほうが良い。それが嫌なら今日の一番上のリンクをクリックされたし。全部解説されている。
ちょっと探して見つかった関連過去記事だけを取りあえず出しておく。探せば、10や20どころではない。
参照:開戦神話 井口武夫著 中央文庫
参照:沈黙のファイル 共同通信社社会部編
参照:朝河貫一とOSSの日本計画
参照:日米交換船 未完

(つづく)

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