TEL QUEL JAPON

リビドーの音階が砂漠に死んだヤギの乳をしぼっていく

November 30~December 2 1941 Tokyo⇔Washington

November 30~December 2 1941 Tokyo⇔Washington
あまり知られていない11月30日から12月2日までの3間日の電報のやりとりを調べてみる。今まで見えなかったことが見えてくる筈だ。

1.Ambassador Nomura's Description of the American Press Reaction to Premier Tojo's Speech, MAGIC, From: Washington (Nomura) To: Tokyo, November 30, 1941, Purple, #1222
(東条の演説の中に "The exploitation of the Asiatics by Americans must be purged with vengeance'という言葉があったと、アメリカの新聞が反応して、休暇中の大統領が急遽執務室に戻ったという内容。日英両方の演説文をTokyoに要求している。アメリカの怒りをどう静めるか。この東条の演説を現在捜索中。11月29日か30日に日本で日本語で行った演説に違いない。英文としては過激な言葉になっている。果たしてどういう日本語だったのだろうか。内容的に見れば、真情を吐露したとも思えるが、こんな時期に宣戦布告に近いことを言ってはならない。米国で報道される事は頭に無かったのだろうか。米国民の顔が思考範囲に見えていなかったのだろうか)

2.Telegram from Tokyo to the Japanese Embassy in Washington to Keep Negotiations Going to Prevent the US from Becoming Suspicious, MAGIC, From: Tokyo, To: Washington, 1 December 1941, (Purple?CA), #865
(ハル・ノートの後なので、日本側の臨戦体制は決定している。しかし交渉はあくまでも続けるように。大統領の休暇の中止は、東条の演説と言うよりも、極東情勢の緊迫が原因ではないか)

3.Telegram from Ambassador Nomura on His Discussions With Hull, MAGIC, From: Washington, To: Tokyo, 1 December 1941, (Purple), #1225
With regard to the matters pertaining to French Indo-China the government of the United States, too, cannot help but feel concern since it has been receiving report after report during the past few days, from U. S. officials stationed in that area, of unusual movements of the Japanese army and navy; the landing of various types of arms; and the movements of transport vessels.
(日本の動きが気になって仕方がない米国。腹を括った日本と比べて、不安と緊張は高まっている。しかしハル・ノートを引っ込める気は全く無い。応じてくれたら有難い、と言ったところか。日本の甲案,乙案を何故一顧だにしなかったのか。また日本はどういうつもりで何を考えて甲案、乙案を提出したのか。結果足元を見られただけなのではないか。ハル・ノートの構想にヒントを与えたのではないか。背後にいるこの時期のドイツの動きも、米国に恐怖心を与えていた筈だ。弱気すぎる日本がかえって米国の猜疑心をかき立てたのではないか。東条の発言については、誤訳とか一部引用による誤解とか、苦しい言い訳をしている)

4.Telegram from Ambassador Nomura on Reactions to Speeches and Press Reports in Japan, MAGIC, From: Washington, To: Tokyo, 1 December 1941, (Purple), #1226
the general opinion seems to be that Tojo's speech indicates the refusal of the Japanese Government to accept the proposals submitted to it by the United States on the 26th.
日本のハル・ノート拒否、交渉決裂は、米国側に充分予測されていたわけだ。あとはタイミングだけの問題。アメリカ側の緊張理由がよく分かる。

5.Telegram from Ambassador Nomura on Exploring a Leaders' Meeting Between the US and Japan,
MAGIC, From: Washington, To: Tokyo, 1 December 1941, (Purple), #1227
would it not be possible to arrange a conference between persons in whom the leaders have complete confidence, (for example, Vice President Wallace or Hopkins from the United States and the former Premier Konoye, who is on friendly terms with the President, or Adviser to the Imperial Privy Council Ishii). The meeting could be arranged for some midway point, such as Honolulu. High army and navy officers should accompany these representatives.
(これは初耳の最後の話し合いの提案だ。Adviser to the Imperial Privy Council Ishiiは調べた結果、石井 菊次郎と判明した。成果があったかどうか分からないが、文書の交換による交渉よりも、体温が感じられたかもしれない。石井 菊次郎は意外ではあるが、適任であることに間違いはない。)

6.Telegram from Ambassador Nomura on the Importance Attached to Premier Tojo's Speech in the US, MAGIC, From: Washington, To: Tokyo, 1 December 1941, (Purple), #1230
Some of the newspapers go to the extreme of commenting that if the speech is given a literal interpretation it can mean nothing except a declaration of war.
これは11月17日の東郷のスピーチに私が感じたのと同じ危惧である。
Even if the worst eventuality materializes, we should be in a position to show all neutrals and outsiders the complete innocence on our part.
東条だけではない、KayaもSuzukiも口が軽い。開戦決定に勇み立ってしまい,相手方の緊張反応に思い至らなかったのだろう。時期的にも米国側はハル・ノートの解答を、すなわち開戦を今か今かと息をつめて待っている状況なのだ。6.は全文上の2.に対する返信である。

7.Memorandum Regarding a Conversation Between the Under Secretary of State (Welles), the Japanese Ambassador (Nomura), and Mr. Kurusu, 2 December 1941
Hullに代わってMr. Welles がルーズベルト大統領からの伝言を伝えてきた。
I have received reports during the past days of continuing Japanese troop movements to southern Indochina. These reports indicate a very rapid and material increase in the forces of all kinds stationed by Japan in Indochina.インドシナに於ける日本軍の動きについての懸念を表明している。The stationing of these increased Japanese forces in Indochina would seem to imply the utilization of these forces by Japan for purposes of further aggression, since no such number of forces could possibly be required for the policing of that region. Such aggression could conceivably be against the Philippine Islands; against the many islands of the East Indies; against Burma; against Malaya or either through coercion or through the actual use of force for the purpose of undertaking the occupation of Thailand. Such new aggression would, of course, be additional to the acts of aggression already undertaken against China, our attitude towards which is well known, and has been repeatedly stated to the Japanese Government.かなり強硬である。he wished to point out that the Japanese people believe that economic measures are a much more effective weapon of war than military measures; that they believe they are being placed under severe pressure by the United States to yield to the American position.野村が言い返している。He said that in view of the actual situation in the Far East there were points in our proposal of November 26 which the Japanese Government would find it difficult to acceptハルノートに固持するMr.Wellesに来栖が率直に言う。(えェ!)ワシントン条約にも言及している。ハル・ノートに対する解答を待つということと、来栖の意見を大統領に伝えるというMr.Wellesの言葉で会見は終わっている。

8.Telegram from Ambassador Nomura Describing His Meeting with Welles, MAGIC, From: Washington, To: Tokyo, December 2, 1941, Purple, #1232
Judging by my interview with Secretary of State HULL on the 1st and my conversations of today, it is clear that the United States, too is anxious to peacefully conclude the current difficult situation.
わざとこう書いたのか、野村は知らされていなかったのか?初めからは単にお互い相手の出方待ちの優柔不断だったのか。それなりの代表権限と責任をもった人物が、ワシントン会議あたりの内容から意見を交換させれば、開戦は回避できたのか。蒋介石やチャーチルの動きを考えれば、当然の結末だったのか。日本の背後にいるドイツ、ドイツとの兼ね合いのVichy政権、それとの兼ね合いの日本軍の仏印進駐など、日本の想像以上に米国は東洋のThe Rising Sun日本に多少は怯え物凄く焦っていたのかもしれない。軍事的に見れば、打たねばならぬ(出る杭)、国際利害面からみれば、(目の上のたんこぶ)、ゆえに両国にとって衝突は運命だったのか。

9.Telegram from Ambassador Nomura on a Meeting With Ballantine on Press Reactions to Tojo's Speech, MAGIC, From: Washington (Nomura), To: Tokyo, December 2, 1941, Purple (Urgent), #1234
At this tense psychological moment in Japanese-American negotiations, the fact that such a strong statement as this has been circulated has given a severe shock to the American Government and people and it is very unfortunate and dangerousこのBallantine の意見は尤もだ。野村の代理の寺崎が会ったのはBallantine .At present the newspapers of both countries ought both to be cool and calm, so will you please advise them hereafter concerning this pointと寺崎は言うが、journalistがこの種の発言に飛びつかないわけがない。cool and calmの表現はいいが、これは新聞に「寝ぼけろ」と言っているのと同じである。日本の意図を見抜いたとして、この新聞社も新聞記者もあとで表彰されたのではないだろうか。

〇宣戦布告が1時間あまり遅れた云々と言われているが、12月7日にハルにわたした(対米覚書)、これは宣戦布告文章ではない。交渉決裂を明言しているに過ぎない。リメンバー・パールハーバーと恨まれるのは、宣戦布告が遅れたからではない。宣戦布告の無い戦争の方がむしろ多い。戦争回避交渉中に、交渉決裂を明言せずに戦闘の幕を派手に捲り上げたからだ。日本の戦略のはずが米国の(腹芸)にしてやられたので、結果として厄介な話になってしまった。
〇以前にも書いたがハル・ノートは、「叩きつけられた」と常に表現されるが、内容はともあれ、それで面を張るように、提出されたわけではない。「お返事お待ちしています」という上の電報を見ても分かる。嫌ならば、ここが嫌だ、あそこが嫌だ、こう書き換えて欲しい、ここはここまでしか譲歩できない、等など、反論をする余地は充分にあった議論のための叩き台だと受け止めるべきだったと考えている。相手がこちらを甘く見て調子に乗ったハル・ノートに仰天するよりも、むしろ自ら進んで一方的に譲歩を書き連ねた甲・乙案のほうが、日本人としては驚きである。何を考えているのやら。亜細亜解放の大和魂のカケラも大亜細亜新秩序構築の壮大な志もそのカケラもすべて、甲・乙案においては、塩をかけられたナメクジのように縮んでしまっている。
〇終戦工作も多方面から働きかけているが、開戦前の戦争回避交渉も苦労のあとが見受けられる。大日本帝国には政府を代表する権限と責任と戦略と知性を併せ持った持った人物が、つまり正式だと相手に信頼される交渉人が、どうも見当たらないのだ。終戦工作も何度か纏まりかけるが、人物が真に代表権を持つものでなければ、最後の最後にご破算になってしまう。開戦も終戦も権限と責任の所在が明確でない。上の電報では野村は近衛文麿または石井菊次郎の名前を挙げて、TOPの最終直接対話を提案していたが、国内で提案は拒否されたのだろうか。大日本帝国は誠意の国だと実感できるが、いかんせん国家構造的に責任の所在がここぞと言う場面でスルリと消えてしまう。戦争回避交渉も終戦交渉もその肩に担っていこうとする、そして担っていける人物が明白にならない。国家間交渉の発想がそもそも出来ない国民だったのか。ルーズ・ベルトは「汚名の日」の有名な演説をして、両院で議決を取り、大統領として開戦を宣言した。国家的コンセンサスの獲得と言う手順を踏んでいる。日本人はあの有名なラジオ放送によって、初めて開戦を知ることになるのだが(国家的コンセンサスの構築の手順)云々などを言う者も発想するものもいない。奇襲だから当然なのだが、奇襲に対し国家に不信や異議を述べ立てるものもいない。国の成すがままである。常に受身が習性である。受身が習性の人間に交渉を委ねられるべくもなく、また交渉能力を期待できる筈も無い。現代的視点で言うとEngagementの発想が完全欠落していたと言える。個々人が個々の頭の中で思考する事が、無言のうちに禁じられていたのだろうか、それが国家に関する事の場合は。マッカーサーが日本人は12歳と言ったのは、そのような意味合いからなのだろうか。西洋連合国が大日本帝国を全体主義国家、Facist国家と呼んだのは、そのような意味合いからなのだろうか。いずれにせよ、いまもって日本人は闘争は出来るが、交渉はどうやら苦手のようだ。

参照:日米関係詳細年表(1941年)
参照:暫定協定案(1941年11月22日)
参照:ワシントン会議

テーマ:軍事・平和 - ジャンル:政治・経済

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